札所29番 笹戸山長泉院

寺の入口のしだれ桜の下に「篠戸山長泉禪院」と深彫りされた苔むした立派な石碑、その右側には、石の延命地蔵が「二十九番」と彫られた台座の上に座っています。秩父札所29番の昔の観音堂は、寺の前方にある小山の頂上近くの岩山に懸崖造りで建っていたが、焼失してしまったので、江戸中期に寺内に移された。間口7間、奥行5間半の寄棟瓦葺きの堂であります。一木一草に至るまで手入れの行き届いた境内は、いかにも観音の霊地らしさを感じられます。秩父札所29番の本堂正面の欄間に、寺宝の一つである板絵額があります。葛飾北斎52歳と署名入りの楼花の絵であります。またこの寺が石札堂と呼ばれるのは、1234年円教寺開山性空上人が、秩父巡礼の折納めたという古い石札があるからであります。昔、山峡の渕の中に光るものが見えるので里人は何だろうと怪しんでいました。その時、十数人の僧が現れて小笹の茂る岩屋の中の観音像を見出し、お堂を建ててお祀りしたのが寺の創始であるといいます。

わけのぼり むすぶささの戸 おしひらき 佛をおがむ 身こそたのもし

住所:秩父市荒川上田野557 TEL:0494-54-1106

札所29番

山門に古木のしだれ桜があります。毎年美しく咲いていたが、だんだん前方の杉が大きくなって日陰となり花が咲かなくなりました。その時、ダム工事がはじまり、この杉が伐採されました。それからは美しい花を咲かすようになりました。「よみがえりの一本桜」と呼ばれます。また、山門の高い台座の上に延命地蔵尊が座しておられます。昔から延命のご利益があるとて人々に信仰されていて熱心に拝んでいる人もおります。真っ先に眼につくこのお地蔵様を拝んで心を静め、それから本堂にいって観音様を拝むとよいです。

 
札所29番

本堂の縁側に小さなお堂があります。ここにはショウヅカのお婆さんが祀られております。三途の川でお守りをしてくれると言われております。像を撫でたり、鉦を叩いて拝んでいる人も多いです。

 
札所29番

本堂の前方に新しいお堂があります。ここには紅葉大権現が祀られております。昔はこの奥の山中にあって、山村火災を防いでくれると村人に信仰されていました。今は火伏せの神として寺院をはじめ、信者の家を守ってくださるといいます。

 
札所29番

ここには豊川稲荷のご分霊が祀られております。寺院守護、家内安全、豊作のご利益があると信仰されております。こじんまりとした立派なお宮であります。豊川?枳尼眞天と染めぬかれた幟がたくさん奉納されています。

 
札所29番

本堂左手の竹林の前に新しいお願い地蔵が立っています。このお地蔵様にいろいろとお願いをしている人がいます。よくお願い事を聞いてくれるといいます。側に交通安全観世音菩薩も祀られております。この静かな境内で、お願いをしたり、交通安全を願う時、人々の心は落ちついて俗世間の悩みから解放されるのであります。