秩父札所5番では美しい屋根の仁王門をくぐると、正面に三間四面の語歌寺の扁額のかかる観音堂が見えてきます。秩父札所5番は、昔、この堂を建てたのは本間孫八という分限者で、孫八は和歌の道に親しむ風流人でありました。ある日、ひとり堂にこもって歌想を練っていると一人の僧が訪ねてきて、話が好きな歌道のことに及ぶと大いにはずみ、二人は夜を徹して和歌の奥義について論じ合いました。翌朝孫八が目を覚ました時、旅の僧の姿はすでになく、のちにこの僧こそ聖徳太子の化身であったことがわかり、孫八はこの堂の名を語歌堂としたといいます。
父母の めぐみもふかき 語歌の堂 大慈大悲の 誓いたのもし
住所:秩父郡横瀬町横瀬6086 TEL:0494-23-4701
観音様は、池から生えた蓮の花の台座の上に坐っておられます。その台座を支えているのは難陀、優婆難陀の竜王であります。この観音様は長寿の功徳と、心の危難や迷いを救って下さるといわれ、深く信仰されております。蓮の花の台座の上に坐っていられるなんて、なんて優雅な観音様なんでしょうね。心が和みます。
本堂の周りをよく見ると、回廊の擬宝珠が美しい年輪を表していて、心が和みます。この回廊の擬宝珠の美しさは札所のなかでも一番美しいと言われております。江戸初期の職人さんの技術が、とても見事に表現されているようです。この寺に、いらしたときには、この回廊の擬宝珠をご覧下さい。
本堂の上には、木の額に入っていて、木の板に描いた人の絵があります。なにやら、熱心に拝んでいるように見えますが、孫八が和歌の奥義でも考えているのでしょうか?正確にはわかりませんが、おそらく和歌を考え、そして多くの人と、和歌について語り合ったのでしょうね。